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特徴

ロービジョンケア

当院のロービジョンケアに対する考え方を示したものです。ご質問・ご相談がございましたらご連絡ください。

「ロービジョンケアってなんだろう?」と思っている皆さん。
これから、一緒に「ロービジョンケア」について考えてみましょう。

「ロービジョン」とは?

私たちの眼は、視力(ものを見分ける能力)、視野(ものが見える範囲)、色覚(色を見分ける能力)など、主に3つの要素でものをみています。眼や視神経、脳(視中枢)のどこかが障害されると、この機能が低下してものが見にくくなります。ロービジョンとは、このような原因でまったく見えないわけではないけれど、日常生活において不自由さを感じている方をさします。

WHOの基準では、矯正視力が両眼で0.05以上、0.3未満となっていますが、ロービジョンの定義は、各国においてまだ確立していないのが現状です。日本では、視覚障害者手帳を持つ方が約31万人(厚労省2006年)で、その内の約70%が視覚活用が可能なロービジョン者です。

また、日本眼科医会は、日常に困難さを感じている方の潜在数を約164万人と推定して、このうち、ロービジョン者(児)は約145万人としています。この数は福岡市の人口とほぼ同じになります。それではどのような眼疾患が主に視覚的な困難さをもたらすのでしょうか。先天性のものは、視神経萎縮、先天性白内障、未熟児網膜症、網膜色素変性症等です。
生後のものでは、緑内障、糖尿病網膜症、変性近視、加齢黄班変性症、網膜色素変性症等です。

ロービジョン者の見え方

視覚障害者手帳交付基準は、1級から6級までの段階があり、不自由さの程度を示しています。

1級 両眼の視力(万国式試視力表によって測ったものをいい、屈折異常のある者については、矯正視力をいう、以下同じ)の和が0.01以下のもの
2級 (1)両眼の視力の和が、0.02以上0.04以下のもの (2)両眼の視野がそれぞれ10°以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が95%以上のもの
3級 (1)両眼の視力の和が0.05以上0.08以下のもの (2)両眼の視野がそれぞれ10°以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が90%以上のもの
4級 (1)両眼の視力の和0.09以上0.12以下のもの (2)両眼の視野がそれぞれ10°以内のもの
5級 (1)両眼の視力の和が0.13以上0.2以下のもの (2)両眼による視野の2分の1以上が欠けているもの
6級 1眼の視力が0.02以下、他眼の視力が0.6以下のもので、両眼の視力の和が0.2を超えるもの

6級までに該当しなくても、日常に不自由さを感じている方は多く存在しますが、ここでは、この基準となる見え方について考えてみます。
視力障害の状態による生活の困難さを3つに大別しました。

  1. 0.01程度の視力があれば、食事や衣服の着脱等の50cm位で行える身の回りの動作がなんとか可能である。
  2. 0.02程度の視力があれば、最低1m位先の物の存在がわかるため、手探りをしない歩行や行動ができ、家庭内の移動や、家族と交流する家庭生活がなんとか可能である。
  3. 家庭から出ての学校生活あるいは職業に従事する等の社会生活が可能である。

つまり、1.は1級、2.は2級、3.は3~6級に相当すると述べています。

スタッフが案内しているところ 次に、視野(ものが見える範囲)に不自由さがある方の見え方について考えてみます。

たとえば、対話している相手の顔の表情がわからないということがあります。
来院された時に、眼科スタッフが検査室へ案内するとします。

視力0.02の見え方 0.02位の視力では、1m先のスタッフの眼と鼻、口の存在がわかる程度で、細かな表情をとらえることは難しい状態です。

写真:視野10°の見え方 人の動きが多い待合い室では、1mの距離からスタッフが声かけをした場合、顔の全体がやっと把握できる程度で、案内している手を同時に見ることはできません。

写真:中心暗点の見え方 さらに中心暗点がある方は、視野が狭いよりもさらに見え方に限界があります。

そのため、「こちらへどうぞ」」だけではわかりにくいので、右側あるいはまっすぐ前に等具体的な方向の声かけをし、場合によっては手をさしのべて介助することが必要です。
ちなみに、テレホンカードの使用済みの穴を片眼でのぞいて1m先を見た時の景色は、約10゜の視野に相当しますので体験してみて下さい。

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ロービジョンケアについて

図:眼科でのケア 障害を受容するまでの心の痛みを十分に理解し、ロービジョン者の生活の困難さに共感できる言動がとても大事であると思います。

そうすれば、ご自身が困難に思っていることを心を開いて相談してくれるようになると思います。

眼科で行える主なことを示しました。(表2)

図:眼科でのケア まず行うべきことは、視機能を正しく評価するということです。視力、視野を初めとする諸検査時に、適切な声かけをしながら、正確なデータをだすことに精力を注がなければなりません。このとき重要なことは、正確な屈折矯正を行う努力をすることです。その結果で得られた視力が、とても大切な基準となるからです。
そして、保有視覚の活用が可能である場合、読み・書きに困難を持つ時と歩行・日常生活に困難を持つ時とに分けて問診を行いましょう。視野が狭いために困難さがある場合は、見たいものを探し、その全体像を把握するために、眼球や顔を動かすことを指導あるいは訓練します。
また、中途で中心が見にくい場合は、中心以外の位置で見ることを訓練します。また、ニーズに合った視覚的補助具を選定・処方します。

視覚的補助具は、レンズ系を使用した光学的補助具とその他様々な非光学的補助具とに分けられます。(表3)

光学的補助具 非光学的補助具
●弱視レンズ:弱視眼鏡、単眼鏡、ルーペ、強度の凸レンズ眼鏡
●遮光眼鏡 ●フレネル膜プリズム ほか
●拡大読書器 ●文字拡大パソコン ●拡大本、拡大コピー
●罫線枠 ●書見台 ●照明 ほか

光学的補助具には、弱視レンズ、遮光眼鏡、フレネル膜プリズム等があります。非光学的補助具には、拡大読書器、文字拡大パソコン、罫線枠、書見台、照明等があります。
必要に応じて、使用訓練を行うことも重要です。これらの視覚的補助具の中には、視覚障害者手帳を持っていれば、補装具あるいは日常生活用具として福祉の補助の対象となるものがあります。また、視覚障害者手帳を持つことで、福祉からの経済的援助や公共・交通機関使用時のサービス等を受けることができるようになりますので、申請の有無を判断することも必要なことです。これらのことを、視能訓練士、ナース等が役割を分担しながら、眼科医師をチームの責任者に行っていきます。
ところで、一般眼科では、歩行・日常生活の困難さをすべてケアしようと考えても時間的、技術的にも限界がありますので、他機関を紹介し連携していくことが必要であると考えます。

他機関との連携の大切さ

図:他機関との連携の大切さ 視覚の発達時期に障害を持ちながら成長していかなければならない先天性のロービジョン児と障害なく視覚を使用した生活を送っていたのに、中途で不自由となったロービジョン者とでは、日常生活での困難さやそれに伴う心の悩みの内容が全く異なります。
ロービジョン児の場合、視覚障害を認知し、子育てしていこうとする家族へのケアがまず第一であると思います。そして、視覚情報の不足のために、全身発達が遅れないよう視覚を積極的に使用させるための補助具使用を含んだ訓練が必要です。(図5)

そして、就学後も長期に亘り、保有視覚を有効に使用するための指導・訓練が継続されることが大事です。また、最近は、視力検査等が難しい発達遅滞児の割合が高くなっています。このような児に対して、早期に屈折矯正を行い、必要ならば眼鏡装用しながら、全身の発達を促すことが望まれるところです。このように発達途上にあるロービジョン児に対して、家庭や学校生活に適応しながら、希望を持ってたくましく生きていくことを援助するためには、眼科だけでは限界があります。そのため、地域の療育センターや盲学校、弱視学級あるいは通級指導教室の視覚障害児を専門指導できる機関との連携を考えていくことはとても重要です。

一方、中途のロービジョン者へは、生きる自信を取り戻すための心のケアをしながら、文字の読み・書きや歩行・日常生活の困難さを改善して、仕事や家庭生活が継続できるようにすることが必要です。全国には、これらの援助を専門としているロービジョンクリニックもあります。また、援助を通所や家庭への訪問あるいは入所で行う福祉施設があります。これらの専門機関との連携が大事だと思います。

さいごに

以上述べてきましたように、「ロービジョンケア」とは、ロービジョン者の見え方とそれに伴う困難さを理解することが重要なことなのです。そのためには、職業人の前に一人の人間としての優しさが問われます。
ロービジョン者との出会いの中で、「自分になにができるのか」と考えるところから、「ロービジョンケア」は始まるのです。

さあ、ロービジョンの方々の幸せのために、一緒に手をあわせていきましょう。

<監修:山田 敏夫 「眼科ケア(メディカ出版)」>

山田 敏夫

医療法人 松井医仁会 大島眼科病院 検査部長
日本視能訓練士協会認定視能訓練士
日本ロービジョン学会理事
福岡県教育委員会教育センター非常勤講師
福岡市教育委員会発達教育センター教育相談員
福岡教育大学非常勤講師
九州保健福祉大学非常勤講師
福岡高等視覚特別支援学校評議員・教育相談員
福岡視覚特別支援学校教育相談員
古賀特別支援学校教育相談員
福岡市学習障害児研究会教育相談員