福祉の豆知識:第6章

1:難病(特定疾患)対策のスタート

昭和46年、厚生省内に組まれた難病プロジェクトチームによって、難病患者のおかれている状況にかんがみ、総合的な難病対策が検討されました。難病対策推進のために、難病対策の考え方、対策項目などについて検討された結果が難病対策要綱として、昭和47年10月にまとめられ、現在までの難病対策の基礎となっています。

2:昭和47年10月の難病(特定疾患)対策要綱

難病対策として取り上げるべき疾病の範囲については次のように整理されました。

【1】原因不明、治療方法未確立であり、かつ、後遺症を残すおそれが少なくない疾病(例:ベーチェット病、重症筋無力症、全身性エリテマトーデス)。

【2】経過が慢性にわたり、単に経済的な問題のみならず介護等に著しく人手を要するために家族の負担が重く、また精神的にも負担の大きい疾病(例:小児がん、小児慢性腎炎、ネフローゼ、小児ぜんそく、進行性筋ジストロフィー、腎不全(人工透析対象者)、小児異常行動、重症心身障がい児)。対策の進め方としては、次の三点を柱として考え、このほか福祉サービスの面にも配慮していくこととされました。

  • ├(1)調査研究の推進
  • ├(2)医療施設の整備
  • ├(3)医療費の自己負担の解消

なお、ねたきり老人、がんなど、すでに別個の対策の体系が存するものについては、この対策から、除外されます。

3:現在の難病(特定疾患)対策の概要

難病対策として取り上げるべき疾病の範囲を、新たに、次の二つの観点に分けられました。(1)医学的に治りにくい、原因も必ずしも解明されていないような、患者の立場からはなかなか治りにくく経済的に非常に負担となるような病気を難病とするという医学的観点と、(2)治療がはっきりしているものであっても、治療の時期を誤るとかその他の理由から病気が慢性化し、障がいを残して社会復帰が極度に困難もしくは不可能である患者も難病患者と考える、という社会的観点です。現在は、この医学的観点からの難病を特定疾患として、ベーチェット病や多発性硬化症をはじめとした121疾患を調査研究の対象とし、そのうち45疾患が医療費公費負担の対象に指定されました(但し条件があります「6:難病(特定疾患)の医療費」を参照ください)。具体的な難病(特定疾患)対策事業としては、昭和47年の「難病対策要綱」が改変され、現在は、

  • ├(1)調査研究の推進
  • ├(2)医療施設の整備
  • ├(3)医療費の自己負担の軽減
  • ├(4)地域における保健医療福祉の充実・連携
  • ├(5)QOLの向上を目指した福祉施設の推進

の5項目を柱に各種事業が運営・推進されています(実施主体は、都道府県)(昭和47年当初は、(1)~(3)の3項目を柱に事業が開始されました)

4:現在のところ難病(特定疾患)に指定されている疾患

  • A:特定疾患治療研究対象疾患として45疾患(下記Bの121疾患のうちの45疾患)(表8)
  • B:難治性疾患克服研究事業(特定疾患調査研究分野)対象疾患として121疾患(表9)

アンダーラインの疾病は「難病情報センター」の各疾患群別診断・治療指針にリンクしています
[◎:主要病態による目の障がい] [○:二次的病態による目の障がい]

特定疾患治療研究対象疾患としての45疾患【表8】
疾病
番号
疾患名疾病
番号
疾患名
01ベーチェット病 23ハンチントン病
02多発性硬化症24モヤモヤ病(ウィリス動脈輪閉塞症)
03重症筋無力症25ウェゲナー肉芽腫症
04全身性エリテマトーデス26特発性拡張型(うっ血型)心筋症
05スモン27多系統萎縮症
(1)線条体黒質変性症
(2)オリーブ橋小脳萎縮症
(3)シャイ・ドレーガー症候群
06再生不良性貧血28表皮水疱症(接合部型及び栄養障がい型)
07サルコイドーシス29膿疱性乾癬
08筋萎縮性側索硬化症30広範脊柱管狭窄症
09強皮症/皮膚筋炎及び多発性筋炎31原発性胆汁性肝硬変
10特発性血小板減少性紫斑病32重症急性膵炎
11結節性動脈周囲炎33特発性大腿骨頭壊死症
12潰瘍性大腸炎34混合性結合組織病
13大動脈炎症候群35原発性免疫不全症候群
14ビュルガー病36特発性間質性肺炎
15天疱瘡37網膜色素変性症
16脊髄小脳変性症38プリオン病
(1)クロイツフェルト・ヤコブ病
(2)ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病
(3)致死性家族性不眠症
17クローン病39原発性肺高血圧症
18難治性肝炎のうち劇症肝炎40神経線維腫症Ⅰ型/神経線維腫症Ⅱ型
19悪性関節リウマチ41亜急性硬化性全脳炎
20パーキンソン病関連疾患
(1)進行性核上性麻痺
(2)大脳皮質基底核変性症
(3)パーキンソン病
42バット・キアリ(Budd-Chiari)症候群
21アミロイドーシス43特発性慢性肺血栓塞栓症(肺高血圧型)
22後縦靱帯骨化症44ライソゾーム病 ○
(1)ライソゾーム病(ファブリー病を除く)
(2)ライソゾーム病(ファブリー病)
  45副腎白質ジストロフィー

アンダーラインの疾病は「難病情報センター」の各疾患群別診断・治療指針にリンクしています

難治性疾患克服研究事業(特定疾患調査研究分野)対象疾患としての121疾患【表9】
疾病
番号
疾患名疾病
番号
疾患名
01脊髄小脳変性症61急速進行性糸球体腎炎
02シャイ・ドレーガー症候群62難治性ネフローゼ症候群
03モヤモヤ病(ウィリス動脈輪閉塞症)63多発性嚢胞腎
04正常圧水頭症64肥大型心筋症
05多発性硬化症65拡張型心筋症
06重症筋無力症66拘束型心筋症
07ギラン・バレー症候群67ミトコンドリア病
08フィッシャー症候群68Fabry病
09慢性炎症性脱髄性多発神経炎69家族性突然死症候群
10多発限局性運動性末梢神経炎(ルイス・サムナー症候群)70原発性高脂血症
11単クローン抗体を伴う末梢神経炎(クロウ・フカセ症候群)71特発性間質性肺炎
12筋萎縮性側索硬化症72サルコイドーシス
13脊髄性進行性筋萎縮症73びまん性汎細気管支炎
14球脊髄性筋萎縮症(Kennedy-Alter-Sung病)74潰瘍性大腸炎
15脊髄空洞症75クローン病
16パーキンソン病76自己免疫性肝炎
17ハンチントン病77原発性胆汁性肝硬変
18進行性核上性麻痺78劇症肝炎
19線条体黒質変性症79特発性門脈圧亢進症
20ペルオキシソーム病80肝外門脈閉塞症
21ライソゾーム病81Budd-Chiari症候群
22クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)82肝内結石症
23ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病(GSS)83肝内胆管障がい
24致死性家族性不眠症84膵嚢胞線維症
25亜急性硬化性全脳炎(SSPE)85重症急性膵炎
26進行性多巣性白質脳症(PML)86慢性膵炎
27後縦靭帯骨化症87アミロイドーシス
28黄色靭帯骨化症88ベーチェット病
29前縦靭帯骨化症89全身性エリテマトーデス
30広範脊柱管狭窄症90多発性筋炎・皮膚筋炎
31特発性大腿骨頭壊死症91シェーグレン症候群
32特発性ステロイド性骨壊死症92成人スティル病
33網膜色素変性症93高安病(大動脈炎症候群)
34加齢黄斑変性94バージャー病
35難治性視神経症95結節性多発動脈炎
36突発性難聴96ウェゲナー肉芽腫症
37特発性両側性感音難聴97アレルギー性肉芽腫性血管炎
38メニエール病98悪性関節リウマチ
39遅発性内リンパ水腫99側頭動脈炎
40PRL分泌異常症100抗リン脂質抗体症候群
41ゴナドトロピン分泌異常症101強皮症
42ADH分泌異常症102好酸球性筋膜炎
43中枢性摂食異常症103硬化性萎縮性苔癬
44原発性アルドステロン症104原発性免疫不全症候群
45偽性低アルドステロン症105若年性肺気腫
46グルココルチコイド抵抗症106ヒスチオサイトーシスX
47副腎酵素欠損症107肥満低換気症候群
48副腎低形成(アジソン病)108肺胞低換気症候群
49偽性副甲状腺機能低下症109原発性肺高血圧症
50ビタミンD受容機構異常症110慢性肺血栓塞栓症
51TSH受容体異常症111混合性結合組織病
52甲状腺ホルモン不応症112神経線維腫症Ⅰ型(レックリングハウゼン病)
53再生不良性貧血113神経線維腫症Ⅱ型
54溶血性貧血114結節性硬化症(プリングル病)
55不応性貧血(骨髄異形成症候群)115表皮水疱症
56骨髄線維症116膿疱性乾癬
57特発性血栓症117天疱瘡
58血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)118大脳皮質基底核変性症
59特発性血小板減少性紫斑病119重症多形滲出性紅斑(急性期)
60IgA腎症120肺リンパ脈管筋腫症(LAM)
  121スモン
5:重症患者認定

「重症患者」とは特定疾患治療研究事業の対象疾患を主な要因として、身体の機能障がいが永続し、又は長期安静を必要とする状態にあるため、日常生活に著しい支障(他人の介助を受けなければ殆ど自分の用を弁ずることができない程度)があると認められる方をさします(表10)。

  • ├(1)重症患者の認定は、患者の申請に基づいて都道府県知事が行う
  • ├(2)認定の基準は、「重症患者認定基準表」の症状が審査時点において存在し、かつ長期間(概ね6ヶ月以上)継続するものと認められることとする
  • ├(3)この基準は、身障1・2級の認定基準に相当するものであり、実務上の取扱としては、身体障がい者手帳の写し等により判断し得るものが大半であると思われるが、身障認定を受けていない患者の場合で、基準に該当すると思われる患者の認定については、医師の診断書(所定様式)を基本に判断することになる

【表10】
対象部位症状の状態一部の例示
眼の機能に著しい障がいを有するもの両眼の視力の和が0.04以下のもの
両眼の視野がそれぞれ10度以内でかつ両眼による視野について視能率による損失率が95%以上のもの
6:難病(特定疾患)の医療費

【1】特定疾患治療研究事業による医療費の患者一部負担の概要難病(特定疾患)の治療には公費負担制度があります。事業名は特定疾患治療研究事業です。「原因不明、治療方法未確立であり、かつ後遺症を残すおそれが少なくない疾病」として調査研究を進めている疾患のうち、診断基準が一応確立し、かつ難治度、重症度が高く患者数が比較的少ないため、公費負担の方法をとらないと原因の究明、治療方法の開発等に困難をきたすおそれのある疾患を対象としています。具体的にどの疾患をとりあげるかについては、厚生労働省健康局長の私的諮問機関である特定疾患対策懇談会の意見を聴いて決定しています。平成15年10月1日から取り扱いが一部変更されています。

  • 1)都道府県から特定疾患医療受給者証の交付を受けている次の方には、従来どおり全額公費負担が継続されるとともに、新たに低所得者(市町村民税非課税)の方が新たに全額公費負担となります。
  • ├(1)難病のために日常生活に著しい支障のある重症患者(表10
  • ├(2)スモン、プリオン病、難治性の肝炎のうち劇症肝炎、重症急性膵炎の患者
  • 2)都道府県から特定疾患医療受給者証の交付を受けている方で、上記1)に該当する患者以外の方は、各医療保険又は老人保健の患者負担の一部について、医療機関窓口において自己負担が必要です。

【2】特定疾患治療研究の期間
原則として1年間です(但し、難治性の肝炎のうち劇症肝炎及び重症急性膵炎については、原則として6ヶ月です)。

【3】対象者
本事業の対象疾患に罹患した者、医療を受けている方で、保険診療の際に自己負担がある方です。保険診療とは国民健康保険の規定による被保険者及び健康保険法、船員保険法、国家公務員等共済組合法、地方公務員等共済組合若しくは私立学校職員共済組合法の規定による被保険者及び被扶養者並びに老人保健法の規定による医療のことです。ただし、他の法令により国又は地方公共団体の負担による医療に関する給付が行われている方は除かれます。

【4】対象患者に関する手続きの方法
1)医療費公費負担受給の申請対象患者又はその保護者などの申請によって行われ、申請に当たっては、「特定疾患医療受給者証交付申請書」に臨床調査個人票(医師の診断書)、住民票及び患者の生計中心者の所得に関する状況を確認することができる書類を添えて、申請者の住所地を管轄する保健所に提出してください。なお、重症患者としての認定基準及び手続きにつきましては、申請者の住所地を管轄する保健所にお問い合わせください。

2)受給者証の交付
都道府県知事は受理後、内容を審査し、対象患者であると決定したときは「特定疾患医療受給者証」を管轄の保健所を経由して申請者に交付します。

7:難病特別対策推進事業

難病特別対策推進事業は、(1)難病相談・支援センター事業(実施主体:都道府県)、(2)重症難病患者入院施設確保事業(実施主体:都道府県)、(3) 難病患者地域支援対策推進事業(実施主体:都道府県、保健所・政令市、特別区) (a 在宅療養支援計画策定・評価事業、b 訪問相談事業、c 医療相談事業、d 訪問指導事業(訪問診療))、(4)神経難病患者在宅医療支援事業(実施主体:都道府県)、(5)難病患者認定適正化事業(実施主体:都道府県)を活動内容としています。

8:難病患者等居宅生活支援事業

難病患者等居宅生活支援事業は、患者のQOLの向上のために平成9年から開始された事業で、難病患者等ホームヘルプサービス事業、難病患者等短期入所(ショートステイ)事業、難病患者等日常生活用具給付事業、難病患者等ホームヘルパー養成研修事業といった、患者の療養生活の支援を目的とした事業を実施し、地域における難病患者等の自立と社会参加の促進を図っています。