福祉の豆知識:第8章

1:労災保険とは

業務上の事由又は通勤による労働者の負傷・疾病・障がい又は死亡に対して労働者やその遺族のために、必要な保険給付を行う制度です。業務災害又は通勤災害による傷病が治った後に障がい等級第1級から第7級までに該当する障がいが残ったときには、障がい補償年金・障がい年金が受けられます。業務災害又は通勤災害による傷病が治った後に障がい等級第8級から第14級までに該当する障がいが残ったときには、障がい補償一時金・障がい一時金が受けられます。

2:眼の障がいについて

視力障がいについて11段階(13区分)、調節機能障がいについて2段階、運動障がいについて2段階、視野障がいについて2段階に、また眼瞼の障がいとして欠損障がいについて4段階、運動障がいについて2段階に区分して定められています。障がい等級表(表15)に掲げられていない眼の障がいについては、労災則第14条4項の規定により、その障がいの程度に応じて、障がい等級表に掲げる他の障がいに準じて等級を認定されます。平成16年7月1日以降労災保険の障がい等級表及び障がい等級認定基準の一部が改正され、「複視を残すもの」として次の2つの障がいが新たに障がい等級表に定められました。「正面視で複視を残すもの(第10級の1の2)」と 「正面視以外で複視を残すもの(第13級の2の2)」の2つです。

労災・障がい等級早見表(眼科関連のみ抜粋)【表15】 
部位
眼球(両眼)眼瞼
(右又は左)
障がい種別視力障がい運動
障がい
調節機能障がい視野障がい欠損又は
機能障がい
第1級
年金313日
(1)両眼が失明したもの    
第2級
年金277日
(1)1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの(2)両眼の視力が0.02以下になったもの    
第3級
年金245 日
(1)1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの    
第4級
年金213日
(1)両眼の視力が0.06以下になったもの    
第5級
年金184日
(1)1眼が失明し、他眼の視力が0.1いかになったもの    
第6級
年金156日
(1)両眼の視力が0.1以下になったもの    
第7級
年金131日
(1)1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの    
第8級
一時金503日
(1)1眼が失明し、又は1眼の眼の視力が0.02以下になったもの    
第9級
一時金391日
(1)両眼の視力が0.6以下になったもの(2)1眼の視力が0.06以下になったもの  (3)両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの(4)両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
第10級
一時金302日
(1)1眼の視力が0.1以下になったもの  (1の2)正面視で複視を残すもの 
第11級
一時金223日
 (1)両眼の眼球に著しい運動障がいを残すもの(1)両眼の眼球に著しい調節機能障がいを残すもの (2)両眼のまぶたに著しい運動障がいを残すもの(3)1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
第12級
一時金156日
 (1)1眼の眼球に著しい運動障がいを残すもの(1)1眼の眼球に著しい調節機能障がいを残すもの (2)1眼のまぶたに著しい運動障がいを残すもの
第13級
一時金101日
(1)1眼の視力が0.6以下になったもの  (2)1眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの(2の2)正面視以外で複視を残すもの(3)両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
第14級
一時金56日
    (1)1眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すも
系列番号25又は6
3:労災障がい等級認定の基準

【1】視力の測定
障がい等級表にいう視力とは、矯正視力をいう(労災則別表第一障がい等級表備考第一号)。したがって、眼鏡により矯正した視力について測定することとなります(コンタクトレンズにより矯正した視力を除く)。ただし、視力の矯正によって不等像症(左右両眼の届折状態等が異なるため、左眼と右眼の網膜に映ずる像の大きさ、形が異なるものをいう)を生じ、両眼視が困難となることが医学的に認められる場合には、裸眼(人工水晶体を移植したものを含む)視力によることとなります。

[例]右眼の視力が1.5、左眼の視力が0.05(第9級)で視力差が甚だしいため、眼鏡による矯正は事実上不可能であるがコンタクトレンズを使用すれば、視力1.2まで矯正できるような場合にあっては裸眼視力によって等級を認定する。

【2】「失明」とは
眼球を亡失(摘出)したもの、明暗を弁じ得ないもの及びようやく明暗を弁ずることができる程度のものをいう。

【3】両眼の視力障がいについて
障がい等級表に掲げている両眼の視力障がいの該当する等級をもって設定することとし、1眼ごとの等級を定め併合繰上の方法を用いて準用等級を定める取扱いは行われないこととされています。ただし、両眼の該当する等級よりも、いずれか1眼の該当する等級が上位である場合は、その1眼のみに障がいが存するものとみなして、等級を認定することとなります。

[例]1眼の視力が0.5、他眼の視力が0.02である場合は、両眼の視力障がいとしては第9級の1に該当するが、1眼の視力障がいとしては第8級の1に該当し、両眼の場合の等級よりも上位であるので、第8級の1となります

【4】調節力とは
明視できる遠点から近点までの空間(調節領)をレンズ(水晶体)の度をもって表わしたものであり、単位はジオプトリー(D)である。調節力は、年令と密接な関係があり、次のとおりとなっている。10歳の場合12(D)、20歳の場合8(D)、30歳の場合7(D)、40歳の場合5(D)、50歳の場合1(D)、60歳の場合0.5(D)。

【5】「眼球に著しい調節機能障がいを残すもの」とは
調節領(調節力)が通常の場合の1/2以下に減じたものをいう。ただし、50歳以上の者については、通常の調節力が1ジオプトリー以下であり、1/2以下に減じた場合は、0.5ジオプトリー以下となり、調節力の減少をほとんど無視し得るので、障がい補償の対象としないこととされている。

【6】運動障がい
眼球の運動は、各眼3対、すなわち6つの外眼筋(上直筋、下直筋、内側直筋、外側直筋、上斜筋及び下斜筋)の作用によって行われる。この6つの筋は、一定の緊張を保っていて、眼球を正常の位置に保たせるものであるから、もし、眼筋の1個あるいは数個が麻痺した場合は、眼球はその筋の働く反対の方向に偏位し(麻痺性斜視)、麻庫した筋の働くべき方向において、眼球の運動が制限されることとなる。両眼視のある人の眼筋の1個又は数個が麻痺すれば、複視を生ずる。複視とは、単一の物体から2個の像を認識することであり、患眼によって見える物体を偽像という。

【7】「眼球に著しい運動障がいを残すもの」とは
眼球の注視野の広さが1/2以下に減じたものをいう。注視野とは、頭部を固定し、眼球を運動させて直視することのできる範囲をいう。注視野の広さは、相当個人差があるが、多数人の平均では単眼視では各方面約50度、両眼視では各方面約45度である。

【8】視野とは
眼前の1点をみつめていて、同時に見得る外界の広さをいう。視野の測定は、フェステル視野計によることとし、8方向の視野の角度の合計が正常視野の角度の合計の60%以下になった場合を「半盲症」、「視野狭窄」及び「視野変状」という。なお、暗点は絶対暗点を採用し、比較暗点は採用しない。なお、従来、決定基準において視野の測定に用いるとしていた「フェステル視野計」については、ゴールドマン型視野計に代わっている。ゴールドマン型視野計で用いる「V/4」の視標が従来のフェステル視野計の白視標と同程度であるとされている。

【9】「半盲症」とは
視神経線維が、視神経交叉又はそれより後方において侵されるときに生ずるものであって、注視点を境界として、両眼の視野の右半部又は左半部が欠損するものをいう。両眼同側の欠損するものは同側半盲、両眼の反対側の欠損するものは交叉半盲という。

【10】「視野狭窄」とは
視野周辺の狭窄であって、これには、同心性狭窄と不規則狭窄とがあり、前者は視神経萎縮、後者は脈絡網膜炎等にみられる。高度の同心性狭窄は、たとえ視力は良好であっても、著しく視機能を阻げ、周囲の状況をうかがい知ることができないため、歩行その他諸動作が困難となる。また、不規則狭窄には、上方に起こるものや内方に起こるもの等がある。

【11】「視野変状」には
半盲症、視野の欠損、視野狭窄及び暗点が含まれるが、半盲症及び視野狭窄については、障がい等級表に明示されているので、ここにいう視野変状は、暗点と視野欠損をいう。

【12】暗点とは
生理的視野欠損(盲点)以外の病的欠損を生じたものをいい、中心性網膜炎、網膜の出血、脈絡網膜炎等にみられる。比較暗点とは、白視標をみることができるけれども、その見え方が、周囲の健常部に比して黒ずんでみえる部分をいう。また、網膜に感受不受部があれば、それに相当して、視野上に欠損を生じるが、生理的に存する視野欠損の主なものはマリオット盲斑(盲点)であり、病的な視野欠損は、網膜の出血、動脈枝の塞栓等にみられる。

【13】眼瞼の欠損障がい
「まぶたに著しい欠損を残すもの」とは、閉瞼時(普通に眼瞼を閉じた場合)に、角膜を完全におおい得ない程度のものをいう。「まぶたの一部に欠損を残すもの」とは、閉瞼時に角膜を完全におおうことができるが、球結膜(しろめ)が露出している程度のものをいう。「まつげはげを残すもの」とは、まつげ縁(まつげのはえている周縁)の1/2以上にわたってまつげのはげを残すものをいう。

【14】眼瞼の運動障がい
「まぶたに著しい運動障がいを残すもの」とは、開瞼時(普通に開瞼した場合)に瞳孔領を完全におおうもの又は閉瞼時に角膜を完全におおい得ないものをいう。

【15】外傷性散瞳について
1眼の瞳孔の対光反射が著しく障がいされ、著明な差明を訴え労働に著しく支障をきたすものについては、第12級を準用することとする。1眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、差明を訴え労働に支障をきたすものについては、第14級を準用することとなる。外傷性散瞳と視力障がい又は調節機能障がいが存する場合は、併合の方法を用いて準用等級を定めることとなる。なお、散瞳(病的)とは、瞳孔の直径が開大して対光反応が消失又は減弱するものをいい、しゅう明とは、俗にいう「まぶしい」ことをいう。

4:アフターケア

症状固定した後であっても傷病によっては保健上の措置等を必要とする場合がある。労災保険ではこれらの措置等を必要とする者(障がい(補償)給付を支給された者)に対し労働福祉事業として17項目のアフターケアを実施している。眼科関連としては、「白内障等の眼疾患に係るアフターケア」がある。白内障等の眼疾患に罹患した方は、その症状が固定した後においても視機能に動揺をきたす恐れがあることからアフターケアを行う制度である。

    【1】対象者
  • 1)業務災害又は通勤災害による白内障、緑内障、網膜剥離、角膜疾患等の眼疾患の傷病者で、労災保険法による障がい(補償)給付を受けている方又は受けると見込まれる方(傷病が治癒した方に限ります)のうち、医学的に早期にアフターケアの実施が必要であると認められる方
  • 2)障がい(補償)給付を受けられていない方(傷病が治癒した方に限ります)であっても、医学的に特に必要と認められる方

【2】期間
原則として治癒後2年間ですが、医学的に継続してアフターケアを受ける必要があると認められる方は、引き続き受けることができます。

【3】範囲
診察は原則として1ヶ月に1回程度。診察の都度検査として、 (1)視力検査、(2)屈折検査、(3)細隙燈顕微鏡検査、(4)前房隅角検査、(5)精密眼圧測定、(6)精密眼底検査、(7)量的視野検査、がある。薬剤の支給として、(1)白内障点眼剤、(2)眼圧降下剤、(3)その他医師が必要と認める点眼剤、がある。