眼瞼下垂の種類と類似疾患

【1】眼瞼下垂の種類

後天眼瞼下垂  1:老人性眼瞼下垂 | 2:コンタクトレンズ眼瞼下垂 | 3:動眼神経麻痺 | 4:Horner 症候群 | 5:重症筋無力症 | 6:慢性進行性外眼筋麻痺 | 7:内眼術後眼瞼下垂 | 8:外傷性眼瞼下垂 | 9:機械的眼瞼下垂

先天眼瞼下垂  1:単純先天眼瞼下垂 | 2:眼瞼縮小症候群 | 3:Marcus Gunn 現象 | 4:General fibrosis syndrome | 5:動眼神経麻痺

後天眼瞼下垂
1:老人性眼瞼下垂
神経あるいは筋麻痺などの特別な原因がなく、老化現象で起こる両眼性の眼瞼下垂。高齢者(おおむね60歳以上)に後天性に発症する。発症の時期に左右差があり、初期には動揺がみられ、進行性で高度下垂となる。高度下垂でも眼瞼挙筋機能は良好。眼位・眼球運動に異常がみられず、瞳孔異常がない。

2:コンタクトレンズ眼瞼下垂
コンタクトレンズの長期装用者にみられる比較的軽度の後天眼瞼下垂である。ハードコンタクトレンズあるいはソフトコンタクトレンズの長期装用眼に発症する。発症の時期に左右差があることが多い。眼位・眼球運動には異常がみられない。瞳孔異常がない。

3:動眼神経麻痺
脳神経のひとつである動眼神経が種々の原因で麻痺し、眼瞼下垂、外斜視、眼球運動障害および瞳孔散大が起こる。後天性発症であるが、まれに先天性にもみられる。片眼性が多いが両眼性もある。

症例:交通事故のため左右の動眼神経を損傷し、両側の動眼神経麻痺となっている。自力で眼瞼を挙上(開瞼)できないため(写真A)、テープで眼瞼を挙上している(写真B)。両眼とも外斜しているため、物がダブって見える(複視)。眼瞼挙筋短縮術(あるいはタッキング術)が不可能なため、左眼瞼の吊り上げ術を行った(写真C:両眼の挙上手術は複視の自覚を促すことになるため行わない)。また同時に左眼の外斜を軽減すべく、斜視手術も行っている。 動眼神経麻痺の様子

4:Horner 症候群
交感神経麻痺による片眼性眼瞼下垂である。瞼板筋の麻痺であり、眼瞼挙筋機能は正常である。頸部交感神経遮断術、頸部腫瘍などで見られるほか、脳幹部障害、脊髄障害でも起こる。上眼瞼の部分的または偽性眼瞼下垂(上瞼板筋麻痺)、眼球陥凹(ミュラー筋麻痺)・縮瞳(瞳孔散大筋麻痺)を伴う。瞼板筋は下眼瞼にもあるので、下眼瞼緑はわずかに挙上(下瞼板筋麻痺)し、瞼裂が狭小する。同時に、顔面、頭部、結膜などの血管拡張および同側の無汗症がみられる。

5:重症筋無力症
重症筋無力症は、神経筋接合部の障害によって起こり、眼瞼下垂および種々の程度の眼球運動障害がみられる。本症の運動障害は、神経支配と無関係で症状が動揺することが特徴的である。とくに疲労により悪化するが、下垂の程度の動揺は、1日のうちばかりでなく経過中にもみられる。片眼、両眼交互、または両眼同時の発症がある。神経支配に無関係な眼球運動障害も合併。

6:慢性進行性外眼筋麻痺
外眼筋ミオパチーのひとつ。重症筋無力症に類似しているが、症状に動揺がない。両眼同時に発症し、進行性。神経支配に無関係な眼球運動障害も認められる。

7:内眼術後眼瞼下垂
内眼術後にみられる眼瞼下垂である。高齢者で白内障、緑内障などの術後にみられるものと、年齢に関係がなく、網膜剥離、硝子体手術など比較的手術侵襲および術後炎症の強かったものにみられる場合とがある。前者の高齢者にみられる場合には、手術が誘因となって老人性眼瞼下垂が進行する場合も多い。後者の場合は、眼瞼挙筋と周囲組織との癒着により下垂となっている。いずれの場合も、眼瞼挙筋そのものの障害によるものではない。

8:外傷性眼瞼下垂
眼瞼および眼窩の外傷によって起こる眼瞼下垂。症状は、外傷の位置や程度により異なる。

9:機械的眼瞼下垂
眼瞼・眼窩の腫瘍・骨折・異物が原因となって起こる眼瞼下垂である。眼瞼の良性および悪性腫瘍は、眼瞼の重さが増加するために眼瞼下垂となる。また、眼瞼の瘢痕組織、眼窩上緑の腫瘍・骨折・異物による眼瞼の運動の障害のために眼瞼下垂が起こる。

先天眼瞼下垂
1:単純先天眼瞼下垂
上眼瞼が短く、下垂している。下眼瞼も軽度に下垂し、片眼性が多い。片眼性は両眼性の約3倍の頻度。下方視の場合、瞼裂幅は健眼よりむしろ大きくなることも特徴。通常、眼瞼下垂以外の異常、すなわち眼瞼の形態異常、眼球運動障害を伴わないが、共同性斜視および弱視が合併することはまれではない。原因は眼瞼挙筋の形成不全と考えられている。

2:眼瞼縮小症候群
両眼性の先天眼瞼下垂・眼瞼縮小(瞼裂が上下、左右の幅とも縮小している状態)・逆内眼角贅皮を三主徽とする特徴的な容貌を呈する症候群。眼瞼は正常の機能を有している。眼球運動障害はない。先天性・家族性が多い。

3:Marcus Gunn 現象
眼瞼挙筋と外側翼突筋との異常連合で、口を開けると上眼瞼が同時に挙上する異常である。片眼性が多いが、まれに両眼性もある。眼瞼下垂をしばしば合併する。成因としては、三叉神経が先天性に眼瞼挙筋に迷入していると考えられている。この現象は、年とともに軽快する傾向にあるといわれているが、自然治癒例は非常にまれである。

4:General fibrosis syndrome
外眼筋fibrosisのひとつ。外眼筋の先天性構造異常のうち、3筋あるいはそれ以上の外眼筋fibrosisのあるものをいう。症状としては、両眼の眼瞼下垂、上転不能、それに伴う異常頭位、上方視・側方視での異常輻輳運動がみられる。先天性・家族性が多い。

5:動眼神経麻痺
脳神経のひとつである動眼神経が種々の原因で麻痺し、眼瞼下垂、外斜視、眼球運動障害および瞳孔散大が起こる。後天性発症であるが、まれに先天性にもみられる。片眼性が多いが両眼性もある。

    【2】他の異常を合併する眼瞼下垂

  • 1:斜視
  • 2:弱視
  • 3:下眼瞼内反症
  • 4:眼瞼血管腫
  • 5:周期性動眼神経痙攣弛緩現象

    【3】眼瞼下垂との鑑別

  • 1:眉毛下垂
  • 2:眼瞼痙攣
  • 3:眼瞼皮膚弛緩
  • 4:他眼の瞼裂異常
  • 5:無眼球・小眼球・眼球癆
  • 6:眼球陥凹
  • 7:下斜視
  • 8:外斜視の片目つむり

眼瞼下垂には上記のように色々な種類・合併症・類似疾患(鑑別診断)があります。原因も目の局所にある場合、頭部疾患による場合、全身疾患による場合など様々です。したがって治療法も原因によって様々です。当院では手術が可能な場合は積極的に手術を行っておりますが、まずは確定診断が必要です。診断には当院あるいは専門医を受診されることをお勧めします。