斜視

斜視には三つの問題点があると言われています。まずは右目左目それぞれの視力の問題、次に両眼で物を見る機能すなわち立体感を感じる機能の問題、最後に外観の問題です。当院では医師と視能訓練士(ORT)が協力し、患者さんごとにこれらの問題を把握し解決するよう診断・治療に全力をあげております。斜視の診断・治療には、斜視の概念に加えて弱視の概念と屈折検査の意義を十分に理解していただくことが必要です。このホームページでは、前項の「屈折と視力」につづいて「斜視・弱視」についてわかりやすく解説を試みてみました。

1:斜視とは | 2:斜視の原因 | 3:斜視の種類 | 4:斜視の検査 | 5:斜視の治療 | 6:斜視手術後の経過

1:斜視とは

斜視とは両眼の視線が正しく目標に向かわない状態をいいます。外見的には一方の目と他方の目の視線の方向が違う場合(それぞれの目が異なった方向を見ている状態)をいいます。例えば、目の前の人が斜視である場合は、その人の一方の目が自分の方向を見ているのに、他方の目が自分の方向を見ていないように見えるわけです。斜視には、見る方向に関係なく斜視の程度が一定のものと、見る方向によって斜視の程度が変化するものがあります。前者を共同性斜視、後者を麻痺性斜視といいます。一般に斜視といえば、共同性斜視を指し、麻痺性斜視は眼筋麻痺といいます。

2:斜視の原因

1) 眼筋・神経支配の異常
眼筋の解剖学的異常・・・眼筋の肥厚や繊維化など筋肉そのものの異常。眼筋の付着異常。眼筋の神経支配のアンバランス。

2) 遠視
ある程度以上の遠視があると、正常で近くを見るときに起きる輻湊(目が内側による状態)が常におこり内斜視となることがあります。

3) 両眼視異常
ものを立体的に見る能力や遠近感(両眼視機能)は二つの目で見る事によって出来る能力です。この能力は自然の訓練の中で発達していくものですが、この発達の過程で障害が起こると斜視になることがあります。

4) 視力障害
一眼あるいは両眼の視力が悪い場合両方の目で見る事が出来ない状態があると、斜視になる事があります。

3:斜視の種類

常に目がずれているものを恒常性斜視。ずれている時とずれていない時がある場合を間欠性斜視といいます。目のずれ方(偏位)の方向によって次のように分けられます。

1) 内斜視
片眼の視線が内側に向いている状態で斜視の中で最も多く、原因に調節が関与しているものとしていないものがあります。

内斜視の様子※左眼は光の反射が眼の中心にみえますが、右眼は外側にずれています。すなわち右の眼が内側に偏位しています。

(1)調節性内斜視
調節(ピントを合わせること)をするときに過剰な眼球の内寄せ(輻湊)が起こり『より目』の状態になることで、遠視が原因になっていることがほとんどです。1歳以後、普通2~3歳で発症します。

調節性内斜視の様子遠視矯正の眼鏡を装用し、改善した状態

※遠視が内斜視の原因になっている場合、遠視矯正の眼鏡を装用することで内斜視が消失します。

メモ:調節と輻湊
私たちが近くのものを見ようとすると、両目は内側に寄ります。眼はカメラとよく比較されますが、近くを見ようとする時、私たちの眼はカメラと同じようにピント合わせをします。カメラではレンズが移動してピントあわせが行われますが、私たちの目では毛様体という筋肉が緊張(収縮)し、水晶体という眼の中にあるレンズの形を変えることで対応しています。このメカニズムを調節といいますが、この調節は同時に輻湊(眼を内側に寄せる状態)という現象を引き起こします。この現象は例えば私たちが近くのものを見るとき、寄り目になることでお分かりかと思います。
ところで、遠視が強い場合には、遠くを見ている場合にも調節をしなければはっきりとは見えないため、普通の場合には近くを見るときに起こる調節に伴う内寄せ(輻湊)の現象が遠見時におこり、結果内斜視となるわけです。

(2)非調節性内斜視
屈折(遠視や近視など)が関与しない内斜視です。一般には両眼視機能が発達する以前(生後1年以内)に発症します。

(3)一部(部分)調節性内斜視
調節性内斜視と非調節性内斜視が混在するもので、その名の通り内斜視の原因の一部が遠視による調節と輻湊が関係しているものです。

一部調節性内斜視の様子眼鏡を装用し改善した状態

※非調節性内斜視:眼鏡を掛けても掛けなくても内斜視の程度が変わらないもの。
一部調節性内斜視:眼鏡を掛けることにより、内斜視の程度が改善するもの(ただし、正常にはならないもの)。

2) 外斜視
内斜視は比較的乳児期に多く見られますが、外斜視は年齢に関係なく見られます。ぼんやりした時や遠くを見ているときに出現し易い間欠性外斜視が多くみられますが、放置することにより次第に恒常性外斜視に進行していくようになります。発症の原因として左右の眼の視力の差がある場合、何らかの原因で両眼視機能が獲得されなかった揚合などがあります。

外斜視の様子外斜視の様子

※左眼あるいは右眼のどちらかが外斜します。

3) 上下斜視
右眼で固視する場合左眼が上斜視になるものを左眼上斜視ですが、この場合左眼で固視すると右眼が下斜視となります。即ち左眼上斜視と右眼の下斜視は同一のものですが、一般には上斜視という言葉を用います。

上下斜視の様子上下斜視の様子

4) 交代性上斜位
右眼で固視すると左眼が、左眼で固視すると右眼が上方に偏位するものをいいます。

交代性上斜視の様子交代性上斜視の様子

※右眼で固視すると左眼が上斜の状態になり、また左眼で固視すると右眼が上斜の状態になるものをいいます。

5) その他の斜視
(1)A-V現象
上方視と下方視で水平方向の斜視の角度が変化する現象をいいます。

[A型外斜視]
※上方を見たときと下方を見たときの斜視の程度が異なるもの。下方を見たとき外斜視の程度が強くなるものをいいます。

[V型外斜視]
※上方を見ると外斜視が強く、下方視すると外斜視の程度が減少します。

(2)上下筋の過動
目を動かした方向で斜視の程度が変動するものがあります。目を動かす筋肉の動きのバランスが悪い場合に起こります。一般には下斜筋過動症が多いようです。

(3)偽斜視
幼児の場合小鼻は低く、眼の内側の皮膚が覆い黒眼の内側の白目が十分に露出しないため、眼が内側に寄っているように見えます。小鼻をつまむ事で本当の斜視と区別できます。

偽斜視の様子小鼻をつまんでいる状態

4:斜視の検査

1) 視力検査

2) 屈折検査 (遠視や近視、乱視等の検査)

3) 眼位検査 (カバーテスト/カバーアンカバーテスト/ヒルシュベルグテスト)

4) 眼球運動検査

5) 両眼視機能検査 (ステレオテスト/ワース4灯法/残像検査/バゴリーニ線条レンズ検査)

5:斜視の治療

屈折矯正(適した眼鏡を装用する)を代表とする手術ではない方法と、手術による方法があります。治療方法の選択は、斜視の種類、性質、年齢、全身状態等で異なります。原則として早期発見、早期治療が必要です。斜視は単に眼の位置がずれているという見かけ上の問題だけでなく、それ以上に両目を使って物を見る力(両眼視機能)という重要な眼の働きに異常が起こってくるからです。両眼視機能は生後1歳くらいでおおよそは出来上がり、5歳ころには完成します。ですから早期の治療が必要になるわけです。すなわち、学童期に入っての斜視の治療は両眼視という機能の面から見ると治りにくくなります。

メモ:両眼視とは
「両眼で受け入れた感覚を、統合して生じる視覚」と定義されます。両眼視機能は、同時視、融像、立体視のステップがあります。

同時視:左右の眼の網膜に映った像を同時に見る機能。

融像:左右の眼の網膜に映った像を一つにまとめて見る機能、即ち二つの像を一つのものとして理解する機能(単一視)をいいます。

立体視:ものを立体的にみる感覚。立体視は左右の眼の網膜に映った像の位置が違うために起こります。左右の眼で交互に物を見ると、物の位置が違って見えます。この網膜に映る像の違いが立体感を生むのです。

1) 手術ではない方法
(1)屈折調整(めがねやコンタクトレンズを使う方法)
斜視の治療の第一は屈折矯正にあります。屈折(遠視や近視や乱視のことをいいます)を矯正する事により、両方の眼で同じ様に焦点の合った像を見させる(明視)事が斜視の治療で一番大切なことなのです。両方の眼ではっきりとした像を見ることにより両眼視をさせます。また、遠視が強い場合は遠視によって引き起こされる、不必要な輻湊によって起こる(眼が内側に寄る状態)内斜視が眼鏡装用により改善されるわけです。

(2)プリズム処方
プリズム処方の仕組み
プリズムを眼鏡のレンズに組み込み、光を屈折させることで擬似的に正常の状態と同じように指標に視線を向かわせる様にする。

2) 手術による方法
眼球には総計6個の眼球を動かす筋肉(眼筋)があります。斜視はこの眼筋の働きの微妙な関連がうまくいかない事により起こるものですから、眼筋の位置を変えたり、短くしたりして眼筋の働きを加減させ眼球を正常な位置にもどします。

■眼球には水平方向に各々一対の眼筋があります(内直筋と外直筋)。
■垂直方向にも各々一対の眼筋があります(上直筋と下直筋)。
■この他に斜めに動かす上下の斜筋があります(上斜筋と下斜筋)。

後転法短縮法(前転法)は、この筋肉の位置を移動させることで眼球を動かす力を強めたり弱めたりする方法です。※下記図参照
後転法:筋肉を後退させる事で眼球にかかる力を弱める方法です。
短縮法(前転法):筋肉を短縮(前転)させることで眼球にかかる力を強める方法です。実際にはこれらの方法の何れか一方の方法を行う場合、また両方を合わせて行う場合があります。

メモ:前転法と短縮法
前転法と短縮法は、同様の効果を示す二つの方法です。前転法は筋肉の付着部位を前方にずらすことで筋力を高め、短縮法は筋肉を短縮して筋力の増加を期待します。一般的には前転法よりも、短縮法が採用されます。

後転法の様子
短縮法の様子

6:斜視手術後の経過

内斜視の場合
内斜視術前内斜視術後

※(左)手術前 (右)手術後

外斜視の場合
外斜視術前外斜視術後

※(左)手術前 (右)手術後